”勘違い”を大事にして 阿部サダヲはどんな役も生き生きと演じてきた
オーディション会場に現れた阿部は軍服姿で眉毛を剃り、金髪。目つきも顔色も悪かった。松尾は劇団員の芸名を自らつけるが、阿部の候補のひとつが「死体写真」だったほど。しかし、即興芝居をやらせると、抜群に面白かった。結果、合格した彼は「子役あがり」と噂されるほど、すぐに頭角を現した。1992年に舞台デビューすると、程なく深夜の連続ドラマ「演歌なアイツは夜ごと不条理(パンク)な夢を見る」(日本テレビ系)への出演を果たした。
演技をすると、ハイテンションなイメージだが、記者会見やトーク番組などに出演する時の彼は、星野源から「あんなに声のちっちゃい主役初めて見た」(NHK「ごごナマ 3時間いだてんSP」2019年1月4日)と笑われるほどローテンション。「自分の言葉でしゃべるのが好きじゃない」「『何言ってるんだ、あいつ』と客観的に思ってしまう」と語っている(TBS系『A-Studio』13年6月7日)。役に入ったときに力を発揮する生粋の「役者」なのだ。
阿部は「“勘違い”をする」ことを大事にしているという。「勘違いをすることが面白かったり、役者としても勘違いしてないと演じるのが無理なときもあるんですよね」(イード「cinemacafe.net」09年12月16日)と。そのいい意味の「勘違い」で、どんな役も生き生きと演じてきたのだ。ならばいつか、天井を歩くことも可能かもしれない。