仕事と治療は両立可能 「がん」で会社を辞めてはいけない
ところが、抗がん剤治療はうまくいき、2年後には転移がんがすべて消えた。残っているのは胃の原発がんだけとなり、手術で切除。その後、10年経っても再発していない。
Aさんは体は元気を取り戻したが、再就職先が見つかっていない。子供はいま高校生で、大学まで進学させたいと思っている。しかし、妻のパートの給料とこれまでの貯金を切り崩しながら生活している現状では難しい。今後、再発した場合、治療費を払えるだろうかという不安もある。Aさんは「抗がん剤治療の副作用には有休でも対処できた。仕事を辞めたことを猛烈に後悔している」と話している。
■つらい副作用と手を切るのも可能な時代
水上院長は、「治療をうまくいかせるためにも、仕事をして社会と関わっていることが重要」と考えている。
「不安は、肉体のつらさを何倍にも膨れ上がらせます。退職や休職で自宅にいれば、病気への不安、経済的な不安、再就職の不安は一層高まり、ストレスが増し、免疫力にも影響を与えます」
水上院長が担当した64歳男性は会社役員。5年半前にステージⅢの進行性大腸がんが見つかり遠隔リンパ節転移もあった。手術後、仕事を続けながら抗がん剤治療を受けた。抗がん剤の副作用があっても、「仕事をしていると気がまぎれる」と辞めることはせず、半休を取ったり、無理のない勤務をしながら対処した。現在はまた仕事の第一線で活躍している。