元ラグビーA日本代表・酒井宏之さん(43)精巣がん
がんから本調子に戻るまでの2~3年は運気も悪くて、投資話や怪しい誘いも多かった。芸能事務所を設立してアジア進出しようなんて話を持ちかけてきた人がいたのですが、後でその人が詐欺と暴行で捕まって……。僕もうっかり犯罪に関わるところでした。
昔、ある占いのおじさんから「35~36歳は試練の時期」と言われていたんですけど、まさにドンピシャ。「危なかった」と思うことが多々ありました。
そんな中、35歳の時に次男を授かりました。抗がん剤の影響で、もう子供はできないと言われていたし、例の“試練”で不運が続いていたのでうれしかったですね。
ただ、息子は先天性心疾患と眼瞼下垂でまぶたが目を覆っているような状態で産まれてきました。これは明らかに僕のがん治療のせいだと思い、自分を責めました。でも、息子は2歳の時にまぶたの手術で視界が開けたと同時に、性格がガラッと変わって、積極的になり、今ではクラスのリーダー。たくましく育っています。
僕自身は13年から中央大学ラグビー部のヘッドコーチに就任し、指導者の道を歩んでいます。中大ラグビー部は伝統ある強豪チームですが、就任当時はやや低迷気味でした。でも今は学生たちの目の色も変わり、強くなる手応えを感じています。