「遺伝する」とはっきり分かっているがんは、ごくわずか
ただし、多くのがんは、がんを発生させる特別な遺伝子を親から引き継いで持っていることではなく、「生活習慣」や「食事」などのさまざまな原因で、遺伝子が傷つくことからできると考えられています。遺伝子が傷ついてがん細胞ができた場合でも、それを修復したり、免疫細胞が排除したりしているうちに消えてしまいます。しかし、それが修復できなくなって増え、さらに大きくなってがんが発病すると考えられているのです。
また、紛らわしいのですが、遺伝子検査とはいっても子孫に遺伝することとは関係なく、手術などで取られたがん組織そのものの「遺伝子異常」をチェックすることがあります。その結果によって、治療薬が選択される場合もあるのです。
たとえば、肺がんの組織で「EGFR」という遺伝子異常を認めた場合、「ゲフィチニブ」(一般名)という分子標的薬に効果がみられる可能性が高いのですが、遺伝子異常がない場合は、ほとんど効かないことが分かっています。
最近では、他の分子標的薬でも効く可能性が高いかどうかを調べるため、治療前にその薬剤用の遺伝子診断(コンパニオン診断)をする場合があります。その結果によって、その患者さんの治療に使えるかどうかの可否を判断します。
遺伝子検査は、さまざまな形でがんの診断・治療に活用されているのです。