上咽頭がん<3>「強靱な体力のおかげで副作用から逃れた」
放射線治療の副作用として、疲労感、だるさ、食欲不振、貧血などがある。だが、高橋さんは、これらの副作用をまったく感じなかった。1日3回の食事もうまい。40年間、建設現場で働き、「真夏は体に塩が噴くほど酷使した強靱な体力のおかげで副作用から逃れられたのでは」と本人は言う。
■医療費は1割負担で約8万円
退院してから1年あまり、ほぼ2カ月単位で放射線治療を1週間に1回、やがて10日に1回になり、最後は月に1回だけとなった。そして、再度の精密検査で担当医から「がんは完全に消滅しましたよ」と告げられた。 その日の夜、高橋さんは1年間守っていた禁酒、禁煙を破って胸の底までたばこの煙を吸い込み、焼酎の水割りを2杯も飲んだ。
「『私のがんはたばこが原因ですか? 酒が原因ですか?』と聞いたところ、担当の先生が『直接の関係は認められません』と言う。それなら、人様に迷惑をかけないのであれば好きなたばこと酒をやめて何が人生かと。妻は怒っていましたけどね」(高橋さん)
今年の春、高橋さんは「がんの5年生存率」をクリアした。ちなみに、「上咽頭がんステージ4」の生存率は50%前後(国立がん研究センターなどの統計資料から)と推定されている。
「ステージ4」の末期がんから無事に生還した高橋さんの医療費は、1割負担で約8万円だったという。