<2>ぼんやりすることが増えた父から「文化」がなくなった
そして2015年。父は頻繁に転ぶようになった。ちょっとした、本当にちょっとした傾斜でも足がもつれて転倒。しかも防御すべき手が前に出ず、顔面から地面へと落ちる。当然、顔は流血と打撲の大惨事だ。
頭も打っているので、転ぶたびに救急車を呼んだ。毎回検査をして、脳や骨に異常はないが、顔面は悲惨だ。試合後のボクサーのような顔なので、他人から「虐待されているのではないか」と疑われるレベルである。
眼鏡も破損を繰り返し、とうとう父自身もかけなくなった。この世界を己の目で見届けようという意欲もまた、減退してしまったようだ。