海外留学は若手外科医にとって大きなプラス
こうした日本の現状を見ると、若手にとって海外留学はやはり大きなプラスといえます。当院でもいま、“武者修行”という形で若手の心臓外科医をインドに派遣しています。欧米では、外科医はあくまでもシステムの中の一員として自分の役割だけをこなす場合がほとんどですが、インドではそうはいきません。まだ医療後進国なので周囲に頼れる範囲が小さく、自分自身が頑張らないといけないのです。しかし、1施設当たりの手術数が年間5000例以上と莫大で、その分だけ症例を経験できますし、努力次第で自分の“陣地”を広げることができます。1年もすれば、アッという間に実力がつくのは間違いありません。
また、こうした海外への武者修行は若手の上司にあたるベテラン医師の度量も試されます。ベテラン医師にとっては、若手を手元に置いたままずっと自分の言うことを聞かせておくほうが都合がよく、楽をすることができます。人員が1人減るというのは、かなり負担が大きいのです。
しかし、それでも若手の成長を考えて、半ば強制的にでも「海外で腕を磨いてこい」と送り出せるかどうか。海外留学も含めて、若手の成長はベテラン医師の器にかかっているといってもいいでしょう。