海外留学は若手外科医にとって大きなプラス
ただ、問題になるのは、海外で経験を積んで一人前になった若手が日本に戻ってくるかどうかです。前回もお話ししましたが、海外流をどこまで貫き、日本流に手直しするところは機敏に対応しなければ通用しません。そのためには医療界全体であらためて見直していかなければならない部分がたくさんあります。
近年、日本では外科医が不足しているといわれていますが、人口比で見ると医師の数が極端に少ないわけではありません。WHO(世界保健機関)のデータでは、日本の人口1000人当たりの医師数は2・30人でOECD加盟国の平均を下回っていますが、徐々に充足しつつあります。
問題なのは医師の数よりも地域偏在です。若手医師の多くは「都市部の大きな病院の方が症例数が多いから経験を積める。最先端の医療を習得できる」と考えるため、都市部に医師が集中しています。しかし、都市部での患者数は限られているため、外科医のスキルを上げるための患者数は必ずしも確保されていないのが現状です。
外科医の数が少なく患者が多い地域にも設備を整えるなどして、若手にとっては都市部よりも経験も実績も積めるようになっていけば、モチベーションもアップします。活躍の場がいくつもあれば、海外で武者修行して日本に戻ってくる若手も増えていくでしょう。そうした外科医の社会的な評価をもっと高めていくような活動も必要です。