緩和病棟に入院する患者は「経緯」も「思い」もそれぞれ違う
緩和ケアは、日常生活上支障となる身体的、精神的な苦痛を早期から軽減し、患者・家族の快適な療養を実現するために、がんと診断された時から切れ目なく提供されることが重要と考えられています。緩和病棟(ホスピス)はそのための入院施設ですが、診療報酬包括制度(検査、治療などにかかわらず1日の入院費用は同じ)の事情もあり、多くの緩和病棟では「苦痛を除くところで、がんの治療を行うところではない」とうたっています。
患者はがんの苦痛を軽減する目的で、中には看取ってもらうために緩和病棟に入院されます。
以前、ある病院の緩和病棟に入院している患者が、私のところに「何か治療法はないか?」とセカンドオピニオンとして来られたことがありました。私はもちろん相談された治療法について答えます。しかしその時は、緩和病棟の担当医から電話がきて、「治療法がなければ『ない』とはっきり言ってほしい」と言われました。これから新しい治療法が登場するかもしれないといった曖昧な答えはしないでほしいという意味だったと思います。治療法がなくなった患者の心は揺れ動きます。わずかでも希望を見いだしたいのは当然です。それをあらわにされる方、まったく諦めているように見える方、さまざまです。