【鯵どんぶり】良質なタンパク質が脳や血管老化防ぐ
我々の骨の原料になる魚の背骨は脊椎動物大発展の礎
海辺で鳥を見てみると、くちばしで捕らえた魚を、上を向いて上手に喉の奥に入れ、そのまま丸のみしてしまう。頭から尻尾まで、魚のいのち全体をホールフード(まるごと食品)としていただく。そこにはすべての栄養素が含まれているから。生命の基本である。
ちなみに、ヒレやトゲが喉にひっかかると痛くないのかと思うが、鳥も工夫している。たとえば、カワセミのオスは捕らえた魚をメスにプレゼントするが、そのときちゃんと持ちかえて頭を先にして差し出している。さすがに我々は魚を丸のみできないので、骨までいただこうとすると調理に工夫がいる。ここでは高温で香ばしい骨せんべいにした。
骨はカルシウムの塊。私たちの骨の原料になる。それだけではない。およそ5億年前、それまでクラゲやミミズのようになよなよしていた生物から魚が進化したとき、一大ジャンプが起きた。背骨の発明である。背骨のおかげで生物は体を支え、大型化することができた。以降、両生類、爬虫類、鳥類、そして我々哺乳類に至る脊椎動物の大発展は、もとはといえば魚が背骨を作ってくれたおかげである。骨せんべいに心からの感謝を。
▽福岡伸一(ふくおか・しんいち) 1956年東京生まれ。京大卒。米ハーバード大医学部博士研究員、京大助教授などを経て青学大教授・米ロックフェラー大客員教授。「動的平衡」「芸術と科学のあいだ」「フェルメール 光の王国 」をはじめ著書多数。80万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」は、朝日新聞が識者に実施したアンケート「平成の30冊」にも選ばれた。
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