【ウドの焼き浸し】アク抜きせず香りと苦味を丸ごと味わう
ホールフード主義<1>
春野菜の持つ力強さは、ときに苦味だったり、えぐみだったりすることがあります。淡泊な味ではなく、その野菜がもつ「押しだし」の強さのようなものも旬の野菜の魅力です。
今回紹介するウドはふつうはアクが強い野菜として知られています。でも、このアクというか、強い香り、苦味こそがウドの魅力で、そこに春があるのです。
料理の教科書にはアク抜きのため酢水に漬ける、あるいは茹でると書いてあります。でも、昨今、スーパーで売られているウドには、それほどのアクはありません。消費者に受けているからでしょうが、私に言わせれば、物足りない。昔の野菜の方が濃厚でした。
ですから、今回はアク抜きの工程を入れていません。産毛の処理も包丁を使わず、スポンジでこすり落とすだけです。世の中に流布されている情報を信じ、型通りのアク抜きをしていたら、ウドの香りが飛んでしまいます。それがおいしいものだと信じ込んでいると、旬を丸ごと楽しむことはできないし、食材のパワーを享受できなくなるのです。
煮浸しに使う白い部分はこれくらい大きく切れば、歯ごたえも含めて、ウドを実感できます。焦げ目が香りを引きたて、梅のだし汁は塩分を控えめにしてくれます。皮はきんぴらに。砂糖は入れません。穂先の方はえぐみがあるので、ホタルイカと合わせて、佃煮風にしました。旬のお料理は出合いの組み合わせを大事にします。春が2倍になるからです。
福岡先生は旬のものを丸ごと味わうことが「生きる力」につながるとおっしゃっていますが、同感です。それを具現化したレシピです。