アルツハイマー病が“脳の糖尿病”と言われるのはなぜなのか
AGEが付着したタンパク質は免疫細胞には異物に見える。そのため、自身のタンパク質に抗体をつくったり、フリーラジカルの生成の原因になるなどして慢性炎症を発生させる。結果、脳の神経細胞やDNA、血管を傷つけて脳への栄養供給を減らしたりする。
糖尿病が進みインスリンの絶対量が不足すると、記憶や学習などに関係する神経伝達物質アセチルコリンが減少し、ADが進行する。この物質はブドウ糖を材料に脳内でつくられるため、脳内のインスリン情報伝達に支障が出れば、糖代謝異常が起こり、つくられにくくなる。
「脳は糖分以外のエネルギー源を利用できない上に大食いで、酸素不足に弱いのが特徴です。そのため、低血糖発作を起こせば、1回ごとに脳に傷痕を残します。それもまたADに近づけます」
■「脳だけ糖尿病」がADを招く
こうしたことは糖尿病の人に起こる現象だ。しかし、ADは糖尿病とは無縁の人でも発症する。なぜか。
「“脳だけ糖尿病”の人がいるからです。インスリンには記憶力を高める作用があり、鼻から吸入させると、正常な人の記憶が15分後には良くなります。一方、インスリンは膵臓だけでなく脳内の海馬でもつくられています。海馬のインスリン抵抗性が高まると、脳内のAβの分解・排除がうまくできなくなりADリスクが高まる。ADは“脳の糖尿病”が原因である可能性が高いのです。そのことは私と、虎の門病院付属の『冲中記念成人病研究所』新郷明子博士との共同研究でも明らかにしています」