声を出せない生活によって失った高音の「ド」を取り戻せた
佐藤さんは、大声を出せるような場所を提供したいと、カラオケを提案したという。
週に1回、2時間のカラオケタイム。平均、20人ぐらいが参加したが、「これが想像以上の効果をもたらしました」。
まず健康面では4、5年前、カラオケをスタートさせたとき高齢の入居者は高音が出なかった。ドレミファソラシドの音符で、高音の「ド」まで出せない。「シ」で終わっていたという。それが歌を続けることで高音のドまで出るようになった。
「高音を出すことで喉が鍛えられ、息が続くようになり、横隔膜も活発化します。老人に多い肺炎や誤嚥の予防策にもなりました」
また、千昌夫のヒット曲「北国の春」を合唱するとき、歌詞カードを見せない。見ながら歌うと、老人特有の背中を丸めてしまうからだ。
背筋をピッと伸ばしたまま歌ってもらうために、ボランティアスタッフが、次に歌う歌詞を読み上げた。
仮設入居者の大半の老人は、外に出ることなく、1日に30分も歩くことはない。股関節の治療に金属を入れた車椅子の入居者もそうである。