牛乳やウコンに医学的根拠なし 医師が教えるお酒の新常識
飲まないよりも、毎日適量飲む方が健康
――病気にならない飲み方を推奨されていますが、適量とはどのくらいですか?
「日本酒は3合が目安です。エタノール量で多くて60グラム。これまでの研究では、適量を飲んでいる人と全く飲まない人は死亡率に変わりはありません。お酒に強い人は自身の酔いの感覚で適量を決めがちですが、健康を害さない量は基本的に万人共通です」
別表1はお酒の種類別のエタノール量だ。酒量を決める上で参考にしたい。
――特にワインはポリフェノールが多いから健康にいいとブームにもなりました。お酒によって効果は違うのでしょうか?
「米国医師会の専門誌で、ワインに含まれているポリフェノールの主な成分であるレスベラトロールには、がんや心臓疾患を防ぐことと因果関係がないと発表されています。むしろ、これまでの研究から酒の種類に関係なくすべてのお酒の成分、エタノールそのものが動脈硬化を抑えると考えられていて、心臓死を減少させる効果が期待できます」
―――心臓疾患予防など、むしろ健康になると!?
「適度なお酒は2型糖尿病になりにくいといわれています。成人に多い糖尿病の型ですが、実はお酒を飲まない人に比べると飲んでいる人の方が発症が少ない。研究によって男性の場合、1日のエタノール摂取量が22グラムの人が、糖尿病の発生が最も低いのです。飲まない人よりも13%もリスクが低下することが分かっています。女性は1日24グラムが最も低い。アルコールがインスリンの働きをよくするためだと考えられています。ただし、すでに経口薬やインスリンを用いた治療中の人は低血糖発作を引き起こしやすくなります。糖尿病の人の飲酒は医師に相談してください」
――新型コロナウイルスによる肺炎の感染者が日に日に増えています。外食を避けたい人も多く、家飲み需要は高まりますが、気を付けることはありますか?
「一人酒は酒量が増えやすいので家族や友人と楽しむことを勧めます。蒸留酒の飲み方には気を付けてほしいですね。ウオッカ、ウイスキー、焼酎などは軽いので量が飲めますが、必ず水やお湯、炭酸で割ること。お酒をつくるときは気持ち多めに割って、アルコール度数を10%程度にすると二日酔いも抑えられます」
ほかにも、別表2で飲酒の医学的効果をチェックしよう。
▽加藤眞三(かとう・しんぞう)医学博士。1985年慶応大大学院医学研究科修了。88年まで米国ニューヨーク市立大マウントサイナイ医学部研究員。その後、都立広尾病院内科医長などを経て現職。近著に「肝臓専門医が教える病気になる飲み方、ならない飲み方」(ビジネス社)。