ワクチン開発にはいくつもの高い壁…使用可能まで1年以上
3段階の臨床試験を終えた後、規制当局による審査と承認を経て、ワクチンの製造と品質管理が行われるようになる。今回は特例で一般的な臨床試験よりも短い期間で済むとみられるが、それでもまだ時間がかかる。
ワクチン開発で徹底した試験が行われるのは、有効性と安全性をしっかり確認するためにいくつも“壁”があるからだという。
「ワクチンを投与することで新型コロナウイルスに対する抗体がつくられたとしても、ウイルスに対抗する抗体の量や強さを指す『抗体価』がどれくらいあれば予防効果があるのかはわかっていません。抗体の生着には個人差もありますし、基準となる値の見極めも必要です。また、つくられた抗体がどれくらいの期間にわたって機能するのかもわかりません。インフルエンザワクチンのように1年程度は効果があるのか、数十年も持続するのか、1週間で効かなくなってしまうのかといった検証も必要です。また、ウイルスは変異が早く型が少し変わってしまうだけでワクチンの効果が望めなくなります。どう対応するかの研究も行わなければなりません」(神崎浩孝氏)
安全性で懸念されているのが、「ADE」(抗体依存性感染増強)だ。ワクチンの投与によってつくられた抗体が、免疫細胞に対するウイルス感染を促進し、感染した免疫細胞が暴走して症状を悪化させてしまう。