「治療には納得、でも通院が苦痛…」大腸がん患者の胸の内
Wさんは続けます。
「病院にはがん相談支援センターがありますが、とてもそんなところに相談に行く気にもなれません。私は図書館に勤めていて、仕事のことでも周りに迷惑をかけています。私、疲れてしまいました。先生は精神科医ではなく、内科医であることは重々承知しています。でも、がんの患者をたくさん経験されていると聞きました。こんな話をしてしまいすみません」
私はWさんのお話を聞きながら、このまま自分が対応するべきか、精神科医に紹介すべきかを考えていました。多くの場合、直感で「この方は精神科で相談してもらったほうがいい」といった判断がつくものですが、今回は違うような気がします。Wさんは、大腸がんのことをしっかり勉強されていて、その情報も確かなもので感心しました。そして、おそらくY准教授との会話がほとんどないのだろうと思いました。
約1時間、私はずっと聞き役でした。そして、「Y准教授に時間を取っていただいて、Wさんの話を聞いて欲しいと私から手紙を書いてみましょうか?」と尋ねました。すると、Wさんは「いえいえ、その必要はありません。親身になって聞いていただいて、いろいろ考えていただいて、本当にありがとうございます。だいぶすっきりしました。きっと私はがんの専門の先生に話を聞いて欲しかったのだと思います。治療は続けます。また来させてください」とのことでした。
「では、次の予定は3カ月後に入れましょうか?2カ月後ですか?」と私が言うと、Wさんは「2」と口にしてほほ笑まれました。