新型コロナ<後編>本当にギリギリの状態だったんだろうと…
■どっちに転んでもおかしくない…
ある日、中田さんの仕事仲間たちが見舞いにやってきた。仲間の声がICUの外から聞こえたため、中田さんは「あいさつだけでもさせてほしい」と看護師に頼んだが、あっさり断られて肩を落とした。しかし、そもそも仲間が見舞いに来た事実はなく、看護師とのやりとりも一切なかったという。
「麻酔による妄想や幻覚だったのかもしれませんが、医師からも『生きるか死ぬかどちらに転んでもおかしくなかった』と言われたように、本当にギリギリの状態だったんだろうと思います」
治療のおかげもあって発熱と血中酸素濃度が落ち着き、意識も回復したことから、4月16日には人工呼吸器が外された。
翌17日には喉につながれていた管が抜かれ、18日は一般病棟に移ることになった。
「ICUに入る時から家族の同意を得て点滴で抗インフルエンザ薬の『アビガン』が投与されていました。管が外れた17日からは錠剤の服用が始まり、退院する20日まで続きました。朝晩4錠ずつを服用するたび、看護師さんがきちんと飲んだかどうかを確認しに来るので、口を大きく開けて中まで見せなければいけません。それくらい徹底していました」