心筋炎リスクは非新型コロナワクチンの方が3倍高かった
新型コロナウイルスワクチンによる副反応は、接種部位の痛みや腫れ、頭痛、発熱などが一般的で、通常は短期間のうちに治まります。一方で、同ワクチン接種後に心筋炎を発症した症例が報告されており、ワクチンとの関連性に注目が集まっていました。心筋炎は心臓の筋肉に炎症が起こっている状態で、心臓の機能が低下したり、まれに命の危険に関わることもあります。
新型コロナウイルスワクチンの心筋炎リスクについてイスラエルで行われた研究では、若年層や男性で高いことが報告されていました。しかしながら、質の高い研究データは限られており、また新型コロナウイルスワクチンの心筋炎リスクが、他のワクチンと比べて高いものなのかについても、よく分かっていませんでした。
そんな中、ワクチンと心筋炎の関連性を検討した研究論文が、世界的にも有名な医学誌「ランセット」の姉妹誌(呼吸器版)に2022年4月11日付で掲載されました。この研究は、ワクチン接種と心筋炎リスクについて、1947~2021年に報告された22件の研究論文、約4億回分のワクチン接種データを統合解析したものです。
その結果、新型コロナウイルスワクチン100万接種当たりの心筋炎の発症率は18.2件でした。また、心筋炎の発症率は30歳未満の方や、男性で高いことも明らかとなりました。しかし、ワクチン全体の心筋炎発症率は100万接種当たり33.3件、新型コロナウイルスではないワクチンでは100万接種当たり56件で、新型コロナウイルスワクチンの方が、むしろ低い傾向にありました。
論文著者らは「新型コロナウイルスワクチンによる心筋炎のリスクは低く、まれな副反応と感染によるリスクのバランスを適切に評価する必要がある」と結論しています。