著者のコラム一覧
東敬一朗石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

眠気や味覚に影響するクスリは“食べる”をジャマする

公開日: 更新日:

“食べる”という行動は、先行期(認知期)、準備期、口腔期、咽頭期、食道期に分けられると前回お話ししました。そして、それぞれに対してさまざまなクスリが影響を与えます。

 まず、「中枢抑制作用を持つクスリ」(抗精神病薬、抗うつ薬、睡眠薬、抗不安薬、抗てんかん薬など)は、食道期を除くすべての時期に悪影響を及ぼします。中枢抑制作用というと難しいですが、「眠気を起こすクスリ」と言えばわかりやすいかと思います。

 眠気が強いと食べ物は当然認識することができませんし、口に運ぶこともしないでしょう。また、無理やり口の中に食べ物を入れても“もぐもぐ(咀嚼=そしゃく)”しようとはしませんし、“ごっくん”なんて夢物語です。みなさんも一度眠っているときに家族や知り合いに食べ物を食べさせてもらってみてください。絶対に食べられませんし、食べようともしないことがわかります。

「味覚障害を起こすクスリ」(抗がん薬、抗菌薬、抗リウマチ薬など)は、主に先行期(認知期)と準備期に悪影響を及ぼします。たとえば、ほとんどの人は一度でもまずいと感じたものは、それ以降食べようとしないはずです。味噌汁の味を甘酸っぱく感じてしまったとしたら、やはり次からはあまり食べようと思わないでしょう。クスリによって味覚障害が起こると、こういったことから“食べる”弊害となってしまいます。

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