「自宅だから、自由に動ける」 諦めていたことにもチャレンジ
自分の選択の積み重ねで人生が出来上がっているとするなら、在宅医療を開始することはその患者さんにとって人生の縮図を体験することなのかもしれません。
私たちの診療所で在宅医療を始められた67歳の1人暮らしの女性。子宮の内膜に発生する子宮体がんの手術を受けており、さらに短腸症候群を抱えていました。短腸症候群とは、小腸の大量切除により小腸の吸収機能が低下することで、栄養や水分の欠乏に伴い、主に下痢、脱水、体重減少などの症状が見られます。
「こんにちは、お元気そうですね」(私)
「そう言っていただいてありがたいです」(患者)
「子宮の手術したのっていつですか?」(私)
「2000年の8月です。その次の年に腸閉塞になったんです。開腹手術もしています。使える腸が1メートルもないかもって病院の先生に言われて。将来的には口から食べるのも大変になるかもって」(患者)
初対面の時から自分の病状を私に説明するその方からは、不思議と明るさと希望が伝わってきました。