会社員の「テレワークうつ」が増えている…現場に立つ産業医が警鐘
■運動不足も一因に
さらに、テレワークによる「運動不足」も、うつ症状を招く要因になる。テレワークでは、通勤や外回りといった、歩いて移動する行動がなくなるうえ、ずっと自宅にいて座りっぱなしで仕事をしている時間も増える。これまで無意識に体を動かしていた機会が減り、日常的な運動量が少なくなってしまう。実際、アジャイルウェアの調査では、7割以上の会社員がテレワークで運動不足になったと実感していた。
日頃の運動はストレスをやわらげ、うつ病のリスクを減らすことがわかっている。英ケンブリッジ大学の研究者らが、合計19万1130人の成人を対象に3年以上追跡した15の研究のデータを分析したところ、身体活動の推奨量(8.8mMET時/週)を満たす運動をすると、うつ病の発症を約12%抑制できると推計された。身体活動を行っていない人に比べて、推奨量の半分(4.4mMET時/週)でもうつ病のリスクは18%低かった。
「運動すると全身の血流が増加して脳の血液循環も改善され、うつ病のリスクが抑制される可能性があると考えられています。また、心のバランスを整える神経伝達物質のセロトニンは有酸素運動で分泌が促進されるので、適度な運動を続けることがうつ病の改善や予防につながるとの報告もあります」