病状が厳しいからこそ、自宅に戻って家族と一緒に過ごしたい
一方、余命を告げられた患者さんの中には、せめて年末年始の残された大切な時間を自宅で過ごそうと、あえてこのタイミングで在宅医療を開始される方もいます。
その患者さんは、肺がんの末期で脳へも転移した状態の多発脳転移と、肺に空気が入らず、酸素を血液に取り込む効率が低下し呼吸困難を生じる無気肺を患う、旦那さんと2人暮らしの65歳の女性の方でした。
病状としてはかなり厳しい。ご本人、ご家族ともに、それを十分に理解していました。旦那さんと近くに住む娘さんが相談し、お正月を前に、家に帰らせてあげたいとなったのでした。
「はじめまして」(私)
「よろしくお願いします」(夫)
「具体的な予後はお聞きでしょうか?」(私)
「新年は迎えられないかもしれないって。抗がん剤が効かなくなって、新しい抗がん剤のために入院したんですけど。なんとかお正月までもって欲しい」(夫)
お正月は、娘さん夫婦とお孫さんみんなで過ごす予定とのこと。