森大祐
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森大祐整形外科医

整形外科全般診療に長年携わる。米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を行い、2000例超の肩関節手術を経験。現在は京都下鴨病院で肩関節や肘関節、スポーツ障害患者に診療を行う。サイトで整形外科疾患の情報を発信。

肩が抜けそうな感覚を引き起こす「肩関節唇損傷」は判断が難しい

公開日: 更新日:

「関節唇」という組織について、知っている人は少ないのではないでしょうか? 関節にある唇のような組織が、関節唇。これだけではなんのことやらですね。

 唇は口の上下にあり、ぷるんとしたやわらかい組織です。肩関節の中にも、ぷるんとしたやわらかい組織があります。その関節唇は損傷すると、肩関節の痛みや、肩が抜けそうな感覚を引き起こします。この病気を肩関節唇損傷といい、診断が非常に難しい。というのも、造影剤が少し入った生理食塩水を肩に注入し、MRI装置で画像化することでやっと肩関節唇損傷と診断がつくからです。

 造影剤はより正確に診断するために用いるものですが、すべてのMRI検査で造影剤を使うわけではありません。副作用の問題もありますから、造影剤が不要の場合は、あえて入れることはありません。そして、「肩が痛い」という訴えでは、MRIを撮るにしても、造影剤を使わないのが一般的です。

 なぜ造影剤が必要なのか? 関節唇というのは関節窩という骨に付いている組織です。関節唇と関節窩の付着しているところが裂けることが肩関節唇損傷です。造影剤が入った生理食塩水を注入すると、裂け目から水が漏れます。まるで穴のあいた屋根から雨漏りするようなものです。それによって、「裂けているな」ということがわかるのです。

 肩の病気には、造影剤入り生理食塩水を関節内に注入しないと診断がつきづらいものがあることを知ってください。造影剤を使わないMRIばかり受けていたために、診断がつくのに数年かかった事例もあります。そのような例を来週お話しいたします。

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