患者のわがままに振り回されつつも在宅医療を進めていく
「ケアマネジャーさんに聞きますね。ところで採血は最近しました?」(私)
「していないね。嫌なんだ採血。痛いし」(患者)
この患者さんの最優先は、健常時からの友人との付き合い。自身の生活スタイルへのこだわりもかなりある様子。金銭的には余裕があり、体が不自由になった今もひとりで街に出かけたり、気ままに年1回程度は新幹線に乗って旅行にも行かれます。
事前に行われた担当者会議では、さまざまな話が……。訪問マッサージを知らないうちに解約する。訪問リハの突然のキャンセルが多い。緊急電話で頻繁に訪問看護の時間が変更される。ヘルパー介入は断り、ゴミ出しも必要ないと言う--などなど。各方面から、この方のわがままに振り回されているエピソードが噴出しました。
認知症とはいかないまでも、感情や衝動の抑制が低下しているのはあきらか。ただ、私の診察時は、礼節をある程度保ち、接してくれる。
今後は認知機能の低下を早期に発見できるスクリーニングテストの実施を視野に入れながら、周辺のスタッフの状況にも目を配り、患者さんの話を傾聴し、スタッフ同士で話し合いながら、在宅医療を進めることになったのでした。