「脂質異常症」放置するとどうなる? 認知症の発症にも関与
しっかり運動しているのに、悪玉コレステロールが高い理由
Yさんが健康診断で「LDLコレステロールが高い」と言われるようになったのは、40代前半とのこと。釈然としなかったそうで、その理由は「こんなに運動をしているのに、コレステロールが高いなんて!」という気持ちがあったから。
実際Yさんの運動量は相当なもので、週3回はスポーツジムに通い、汗を流している。それでも、健康診断では毎年「LDLコレステロールが高い」。
実はLDLコレステロールは、運動だけではなかなか下げることができないのです。コレステロールは生きていく上で必要な成分で、体内に再生産する仕組みが備わっています。エネルギー源である中性脂肪は運動すれば減りますが、コレステロールはエネルギーにならないので、運動しても減りません。
コレステロールは、運動よりも食事の見直しが重要。悪玉コレステロールが高いのは、脂質異常症の発症や進行に大いに関係しますので、健康診断などで指摘されているようなら、まずは生活習慣改善、それでダメなら薬物治療の検討が必要です。
さて、認知症の連載で、なぜここまで脂質異常症の話をするのか。それは、脂質異常症が認知症の発症に関与するとみられているからです。
そもそも脂質異常症は前述の通り脳卒中の危険因子で、血管性認知症のリスクを高めます。さらにはアルツハイマー型認知症の関連も報告されています。脂質異常症の中でも、高LDLコレステロールと低HDLコレステロールがアルツハイマー病の発症リスクに影響を与えるとされています。
ただ、脂質異常症がアルツハイマーの発症を抑制するとの報告もあるんですね。「脂質異常症=アルツハイマーの危険因子」とする一定の見解はまだ得られていない状況ですが、血管性認知症との関係は明らかなわけですから、「認知症の発症前に対策を講じよう」と常から言っている私としては、コレステロールが高ければ、速やかに生活の改善、必要に応じての薬の治療を開始してほしい。
その後のYさんですが、最近、LDLコレステロールを下げる薬を飲み始めたそうです。
Yさんと同様「コレステロールが高い」と言われていたテニス仲間が脳梗塞を起こしたことがきっかけ。幸いにも命に別条はなく、後遺症もなかったそうですが、その仲間の話を聞いて「コレステロールが高いのは、まずいんだな」と考えるようになったとのことでした。