若年性も老年性も「私は絶対にならない」とは言い切れない
若年性アルツハイマー病の平均年齢は51歳。ほとんどが50代で発症し、40代での発症例は多くありません。20~30代というかなり若い年齢で発症するケースもありますが、遺伝を原因とする家族性アルツハイマー病で、全患者さんの1%以下と、ごくまれです。
認知症の症状は、脳の神経細胞の変性が原因で起こる「中核症状」と、中核症状によって状況に適応できなくなり、行動面や心理面で症状が出る「行動心理症状(BPSD)」に大別できます。
中核症状は、物忘れ、場所や時間などが認識できない見当識障害、失語、失行、失認など。認知機能が低下すれば誰にでも現れる症状です。
それに対し行動心理症状は、不安、抑うつ、興奮、妄想、幻覚、徘徊、暴言・暴力など。
若年性アルツハイマー病も、老年性も、中核症状や行動心理症状があるのは共通していますが、若年性は症状の進行スピードが速い(とはいっても、認知機能低下は年単位で進むので、急激に悪くなるということではありません)。
通常、アルツハイマー病は、記憶をつかさどる海馬(側頭葉の内側)と頭頂葉が病変の中心となります。しかし、若年性では、前頭葉、側頭葉も含めた広い範囲がダメージを受けるので、症状が多彩になりやすい。また、「巣症状」が、老年性より出やすいことも指摘されています。巣症状の代表的なものは次の通りになります。
【失語】音として聞こえているが、言葉や話として理解すること、自分が思っていることを言葉として表現することが困難。
【失行】日常的な動作や行動が困難になる。例えば、着替えができない、道に迷うなど。
【失認】自分の体の状態や物との位置関係、目の前にあるものが何かを認識するのが困難になる。
若年性では、仕事や家事、子育てなどで社会との関わりが多く、周囲の人とのコミュニケーションを取りながら行動しています。そのため、うまくいかないことが増えるとイライラしたり落ち込んだりして、結果、不安、うつ、興奮、妄想などの行動心理症状も出やすくなる。
若年性も老年性も使う薬は共通していますが、若年性アルツハイマーの患者さんには、不安やうつなどを改善するために、抗不安薬やSSRIなど精神疾患の治療に用いる薬を処方することもよくあります。