夏山の「低体温症」に要注意!1日10人の死亡事例も…綿素材の下着にもリスクが
「ツアー客らはみな登山経験があり、宿泊を含む縦走予定ということで防水透湿性素材の雨具など装備に不備のないメンバーも多かったようです。しかし、天候悪化時の判断を誤った結果、低い気温に加え、連日の悪天候による衣類や足元からの濡れ、風による体温喪失、なにより低体温症の知識が乏しかったことから悲劇を招いたのです」
そもそも人の体温には腋窩など体の表面から測定する皮膚体温と、臓器や血液の温度を反映する深部体温の2種類がある。深部体温は食道や直腸専用の体温計を使って測り、37度くらいが正常とされる。
「低体温症とは寒冷環境などにおいて体の深部体温が35度以下に低下した病態を言います。一般的に、軽症(32~35度)、中等症(28~32度)、重症(28度未満)の3つに分類され、中等症以上で死亡率が上がるといわれますが、環境や対応次第では軽症でも死亡リスクは高まります」
低体温症になると、最初は筋肉を小刻みに動かして熱を発生させて体温を維持しようとする「シバリング」と呼ばれる体の震えが起きる。深部体温がさらに低下するとやがて震えが収まり動作が遅くぎこちなくなって反応が鈍くなり、判断力が低下。やがて昏睡状態になって心拍や呼吸が遅く、弱くなり最後は停止してしまう。