日本の心臓移植はどうあるべきか…あらためて議論するべき
ただし、高額な医療費をつぎ込む改革を進めるには、心臓移植手術が本当に世の中にとって必要なものなのかをあらためて深く議論することが欠かせません。現状、心臓移植手術には莫大な医療費がかかります。手術に加え、そこに至るまでの重症心不全や拡張型心筋症に対する治療や経費を合わせると、1人2億円ほどかかるとされています。それくらい、「ヒト・カネ・モノ」の資源がかかる医療なのです。
その費用対効果を考慮した場合、ヒトを増やして環境を整えるためにどこまで医療費をつぎ込むのかだけでなく、過疎化した地域医療や高齢者医療、高度化した抗がん剤治療など多岐にわたる医療とのバランスなど、さまざまな角度からたくさんの意見を出し合って、しっかり議論する必要があるでしょう。
個人的には、現在の日本の保険制度の中では、脳死後の心臓移植はどうしても限界があると考えています。国内調査では脳死後の臓器提供の意思は約40%あるものの、運転免許証やマイナンバーカードでの臓器提供意思表示記載は約11%とドナーが現れやすい環境とは言えない現実があります。そのため、心臓移植という医療的な“文化”が成り立ちにくいのではないかと思われるのです。