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新井平伊順天堂大学医学部名誉教授

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

視力低下が認知症リスクを高める…「ランセット」で発表

公開日: 更新日:

 40歳代以上のみなさん、眼科検診を定期的に受けていますか? もし受けていないようなら、1年に1回は受けることをお勧めします。 

 認知症の本連載でなぜ眼科検診について触れるのか──。それは昨年、視力低下が「改善可能な認知症の発症リスク因子」であることが、国際的権威のある医学雑誌「ランセット」で報告されたからです。

 ランセット国際委員会は2017年、20年、24年と認知症の発症リスク因子を発表しています。当初は9因子だったのが、20年には12因子となり、24年には14因子に。

 新たに加わったのが、視力低下と高LDLコレステロール血症です。

 40歳代以降で患者数が増える目の病気として代表的なものが、緑内障、白内障、加齢黄斑変性です。中でも緑内障は「中途失明原因の第1位」であり、40歳代の20人に1人が該当するといわれています。また、白内障のように「濁った水晶体を取り換えると、よく見えるようになる」わけではありません。失った視力は取り戻せないのです。

 だから早めの治療開始が重要なのですが、症状の進行が緩やかである上、どちらかの目が見えづらくなっていても、見える方の目で補って見てしまうので、視力低下を感知しづらいのです。

 つまり、自覚症状に頼っていては早期発見につながらない可能性がある。視力検査では緑内障がわからないので、眼圧検査や眼底検査を受けることが必要となってきます。

 ランセットの認知症リスク因子には、「社会的孤立」も挙げられています。著しい視力低下は、行動範囲や人間関係を狭めかねません。緑内障は幸いなことに治療法があります。適切なタイミングで治療を開始すれば、視力を維持できるのです。

 認知症対策のためにも、眼科検診を。「年に1回、職場検診を受けている」という方も、一般的に職場検診には眼圧・眼底検査が含まれていないため、自分が受けている検診の内容を確認してください。

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