「軽度認知障害」と「軽度認知症」…インフルに例えるなら微熱の段階か発症後か
「軽度認知障害」と「軽度認知症」。一見すると同じことを指しているようですが、意味は異なります。患者さんやそのご家族からも「どっちも同じじゃないですか?」としょっちゅう聞かれる軽度認知障害と軽度認知症について、お話ししたいと思います。
認知症は、時間をかけて症状が現れてくる病気です。全く問題がない段階から、日常でいくつかの変化を自覚できる段階→自分だけが「何か変」と感じる段階↓生活に支障はないものの仕事や家事で物忘れによるミスが増えてくる段階→周囲から「何か変」と指摘される段階を経て、認知症の診断へと至ります。
軽度認知障害は、物忘れを自覚し、周囲も気づき始めた段階です。仕事や家事で物忘れが増えてきてはいるけれど、でもこなせている。軽度認知障害は認知症そのものではなく、しかし健常な状態でもありません。英語で「Mild Cognitive Impairment」ということから、頭文字をとって「MCI」と呼ばれています。
一方、軽度認知症は、「認知症と診断されて以降」のことです。認知症は程度によって軽度→中等度→重度とされており、軽度(の)認知症となります。
私はよく、風邪やインフルエンザを例に出して、患者さんやそのご家族に説明しています。
「体が重だるく微熱があるようだ。風邪かインフルエンザかな」と思う段階が軽度認知障害。38度の熱が出て「風邪(インフルエンザ)ですね」と診断されたのが軽度認知症。様子見をしていると、高熱が出たり肺炎になったり緊急入院に至ったりするかもしれない(=中等度認知症、重度認知症)。だから、早めの対策が必要なのですよ、と伝えています。