(1)増える障害者雇用の現場には、高い離職率や平均給与などいくつものハードルがある
もちろん、公的機関の雇用も同様で前年より4~5%増と着実に伸びていることが分かります。
とはいえ、冒頭で紹介したように、障害者雇用の現場にはいくつものハードルがあるのも事実です。その一つが、離職率の高さといわれています。
転職を10回経験したことがあるYさん(39歳)は、自分の体験を交えてこう話します。
「障害者雇用と一口にいっても、身体障害者と精神障害者とではだいぶ違います。身体障害者は長く働いている人が多いのに対し、僕のような精神障害者は、職場の人間関係や環境によって精神的に不安定になりやすく、会社を休みがちになり、短期間で辞める人が多いのです」
事実、身体障害者の平均勤続年数は12年2カ月と一般の労働者と変わりませんが、精神障害者は5年3カ月、発達障害者は5年1カ月と、大きな差があるのです(令和5年度「障害者雇用実態調査」)。
さらに、平均給与の低さも早期離職の一因とされています。
都内の情報関連会社に勤務する40代の男性は「障害者雇用は収入が少ないため、親と同居せざるを得ない」と厳しい実情を話してくれました。物価の高い都内では経済的な自立は至難の業だそうです。