「クローン技術」は再生医療の明るい未来になりえるのか
腎臓が十分に機能しなくなってしまった人にとっては、生きていくために欠かせない治療です。しかしその一方、人工透析の患者さんはカルシウム・リン代謝が崩れてしまうため、低カルシウム血症や高リン血症などが起こりやすくなります。それによって、血管の石灰化や動脈硬化が促進され、心臓疾患のリスクがアップします。つまり、生きていくために必要な臓器のパーツ=機能を個別に人工的に代用した結果、別のパーツ=機能の寿命を縮めていることになります。
本来の腎臓が担っているこうした代謝の機能までをカバーして人工透析を行う仕組みが実現できるなら、透析医療にはまだまだ進化する余地があります。ただ、費用対効果の関係もあって、いまのレベルにとどまっているのが人工透析の現状といえます。本来の臓器というのはそれくらい複雑かつ緻密にできていて、代替品を作るのはハードルが高いのです。
■クローンには倫理的に重大な問題がある
人工臓器はもちろん、iPS細胞でも本来の臓器そのものの再生が難しいとなると、現時点で可能性があるとすれば「クローン」くらいといえるでしょう。クローンというのは、「遺伝的にまったく同じである個体や細胞の集団」を指します。母体となる生物から作られたまったく同じ遺伝子を持つコピーといえばいいでしょうか。