田中幾太郎
著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

サラリーマンが子供を青学初等部に通わせる教育的メリットは? 学費以外にも出費はかさむ

公開日: 更新日:

 歌舞伎界の最高名跡の市川団十郎、狂言師の和泉元彌、作曲家の筒美京平、バイオリニストの高嶋ちさ子……と数多くの著名人を輩出してきた青山学院初等部。セレブ小学校の代表格だが、学費が飛び抜けて高いというわけではない。初年度にかかる費用は入学金や授業料に施設設備費や給食費などの諸経費を合わせ約146万円。ライバルの慶応幼稚舎(163万円)より低く設定されている。とはいえ、「一般サラリーマン家庭にとっては、けっこうきつかった」と振り返るのは初等部から大学まで青学に娘を通わせた母親だ。

「学費はともかく、イベントがいろいろあって、出費がかさむんです。6年生の時はオーストラリアでのホームステイ。全員参加ではないのですが、子どもからせがまれたら行かせないわけにはいかない。みじめな思いはさせられないですから」

 何よりしんどかったのは母親同士のつきあい。

「初等部では給食の配膳をはじめ、さまざまな場面で保護者がボランティアとして手伝うことが求められ、お母さんたちと顔を合わせる機会が多い。高級ブランドを身につけている人が大半で、場違いなところに来てしまったと思い知らされるのです」

 彼女たちが乗っているクルマもほとんどが外車。この母親も「見えを張って」外車に乗り換えたが、燃費の悪さに辟易して、すぐに国産車に戻した。比較しても仕方ないと割り切るようになり、気が楽になったという。

「いずれにしても子どもにとって、初等部から青学に行けたのは非常にプラスだった。伸び伸びした学園生活を送ることができた」

 初等部の長所は「一人一人を型にはめ込まないところ」だと話すのは同校OBで青学全体の同窓会「青山学院校友会」の元役員。

「僕が在学していた1970年代前半、初等部はいち早く週5日制に踏み切っている。土曜日が休みになり当時は単純にうれしかっただけですが、今から思うと、とても進歩的な小学校だったと感心させられます」

 5日制導入の狙いは「時間を家庭に返す」ことだった。学校が児童を束縛せず、個性をいかに伸ばすかに腐心してきたのだ。

 ランドセルの代わりに手作りの肩掛けカバンで通学。教科書やノートも必要な時しか持って帰らない。テストの点数で評価すべきではないと、通信簿もなくした。

「昔から個を大切にしてきた校風。改革によって、それがより具現化されたということでしょう」(同)

 自由を謳歌する中で才能を開花させた卒業生は数えきれない。世界的ピアニストのフジコ・ヘミング(90)もそのひとり。6年前には初等部の礼拝堂でコンサートを開いた。「ラ・カンパネラを聴き、彼女の青学への思いが伝わってきて涙が出てきました」とOBは話す。同校の人気は右肩上がり。入試まであと5カ月足らずである。



◆田中幾太郎の著書「名門校の真実」」(1540円)日刊現代から好評発売中!

最新のライフ記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 暮らしのアクセスランキング

  1. 1
    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

  2. 2
    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

  3. 3
    3選狙う小池都知事は情勢調査「一歩リード」も圧勝遠のき焦り…街頭演説も聴衆スカスカ

    3選狙う小池都知事は情勢調査「一歩リード」も圧勝遠のき焦り…街頭演説も聴衆スカスカ

  4. 4
    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

  5. 5
    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

  1. 6
    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

  2. 7
    悠仁さま「オックスフォード大進学」再浮上のナゼ…昆虫標本が充実した自然史博物館の存在

    悠仁さま「オックスフォード大進学」再浮上のナゼ…昆虫標本が充実した自然史博物館の存在

  3. 8
    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

  4. 9
    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

  5. 10
    小池知事は都知事選TV討論すべて拒絶…蓮舫氏が街頭演説で暴露し「逃げないで」と訴え

    小池知事は都知事選TV討論すべて拒絶…蓮舫氏が街頭演説で暴露し「逃げないで」と訴え

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

    岡本和真と村上宗隆のメジャー挑戦に“超逆風” 大谷バブルをブチ壊したMLB先輩野手の期待外れ

  2. 2
    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

    ロッテ佐々木朗希「強硬姿勢」から一転…契約合意の全真相 球団があえて泥を被った本当の理由

  3. 3
    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

    佐々木朗希の今季終了後の「メジャー挑戦」に現実味…海を渡る条件、ロッテ側のスタンスは

  4. 4
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 5
    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

    「あぶない刑事」100万人突破で分かった…舘ひろし&柴田恭兵“昭和のスター”の凄みと刑事役の人材不足

  1. 6
    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

    ソフトB山川穂高「無神経ぶり」改めて露呈…31試合ぶり本塁打も身内から異論噴出

  2. 7
    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

    石丸伸二候補に大逆風…「恫喝」訴訟で2連敗、都知事選後の国政進出シナリオも狂いが

  3. 8
    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

    蓮舫候補に一発逆転の「神風」は吹くのか…7.7都知事選「一歩リード」の小池知事を猛追

  4. 9
    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

    都知事選最終盤に飛び交う「蓮舫狙い撃ち」の怪情報…永田町に出回る“石丸2位”データの真の狙い

  5. 10
    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」

    猛チャージ石丸伸二候補に広がる危機感…広島からは「あんなぁ都知事に押し上げちゃいけん」