ワンちゃんの繁殖は適正に行いたい…それでも交配してしまったら堕胎薬は“奥の手”
ワンちゃんを飼育する上では、不用意な繁殖をしないよう、去勢や避妊を適正に行うのが基本。それでも交配してしまった場合の“奥の手”が、この薬です。アリジンの認可は、時代的な背景も大きな要因でしょう。
実はこの薬、一部の獣医師の間では効能外の治療でとても評価されています。子宮蓄膿症や子宮粘液症への内科的治療薬としてです。
子宮蓄膿症は、大腸菌などの感染で子宮に膿がたまる病気です。避妊手術をしていないワンちゃんで、生理から1~2カ月後に発症します。若年発症はまれで、中年からシニアに多いのが特徴です。
子宮口が開いていると、膿や血液が陰部から排出されますが、閉じていると分泌物がみられません。周りには気づきにくいですが、感染が全身に及ぶと、敗血症などで命にかかわります。
この薬は、子宮口を開かせる、内科的に排膿することができるのです。薬を使わなければ、外科手術が第1選択で子宮と卵巣を摘出しますが、シニアでは負担が大きく、手術後に亡くなることもあります。
この薬の登場で悲劇を回避することができるのですが、あくまでも効能外ですから、すべての動物病院で対応してくれるとは限りません。もしシニアで子宮蓄膿症などを発症した場合は、「手術をせずに済む方法はないか」と相談されるとよいと思います。
(カーター動物病院・片岡重明院長)