難関資格を次々取得…元関脇・隆乃若は現在“大学3年生”
「相撲界とは全く違う世界に飛びこびましたからね。やはり最初は本当に不安でした」――。
都内にある所属事務所で話を聞くと、尾崎勇気さん(39=元関脇・隆乃若)は引退直後をこう振り返った。
土俵から離れて8年。150キロ以上あった体重は現在100キロも、“角界のイケメン”として脚光を浴びた端正なマスクは今も変わっていない。
父親は元プロ野球選手。小、中学は野球を強要する父に反発して野球をやらなかった。1992年、中学卒業と同時に故・鳴戸親方のスカウトで角界の門を叩いた。99年11月の初入幕後から07年9月の引退まで幕内在位は計34場所。最高位は関脇。
実績を考えれば引退後も相撲界に残ることはできたが、尾崎さんには角界を去らなければならない事情があった。
「相撲界で後進指導にあたるには計105ある親方株の一つを取得する必要があります。でも、私が引退した時は、その“空き”がなかった。それなら、思い切って他の世界で挑戦してみようと思いまして。幸い、師匠(鳴戸親方)が草野仁さん(タレント)と懇意にしていたので、その縁もあって草野さんの事務所に入れていただき、相撲の楽しさを伝えられるタレントの道を歩み始めました」
■200時間の猛勉強で一発合格
しかし、引退後すぐに相撲界と一般社会が“別世界”であることを痛感する。
「相撲部屋にいれば、たとえ序の口や序二段でも衣食住は保障される。それが部屋を出れば、仕事、買い物、家事も全て自己責任。みなさんにとっては当たり前でしょうが、中卒で相撲界しか知らなかった私にはやはり戸惑いがありました。それで、『このままではいけない』と思い、中卒でも取れる資格を取っていこうと思いました」
手始めは「宅地建物取引士」への挑戦だった。
民法、税法、借地借家法など豊富な知識を求められる合格率15%前後という難関国家資格の一つ。尾崎さんは11年7月から本格的に試験勉強を開始。計200時間の猛勉強もあって、4カ月後に一発合格した。以後も、独学で次々と資格を取得。相撲解説や講演などタレント業のかたわら、「管理業務主任者」や「住宅ローンアドバイザー」「フィナンシャルプランナー」など5つ以上の資格を持つまでに至った。
異色力士の奮闘は続く。13年からは都内の通信制大学に入学。現在も“大学3年生”として経営学を学んでいる。
「勉強って損になることは何一つない。相撲の稽古と同じ。やればやった分だけプラスになる。その気持ちがあるうちはタレントの仕事と共に色々な勉強を続けていきたいです」
充実した生活に表情は緩む。もっとも元力士の血は今も胸に残る。外国人勢に押される角界の話題になると、表情は一変した。