東京五輪1年延期で大打撃 スポンサーがどんどん逃げている

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「強化の足元が揺らいでいる。1年後の大会どころではないアスリートも出てきている」

 共同通信によると、2日、橋本五輪担当相が開催の1年延期が決まった東京五輪に関し、こう言って危機感を示した。延期決定により、選手の所属先やスポンサーから支援更新の見送りを打診される競技団体や選手がいるというのだ。

「テニスの錦織圭や大坂なおみのように、複数年契約のスポンサーが万全なサポートをしてくれる選手はごく一部。競技団体の中には赤字を出しながら運営しているところもあり、所属選手が活動を継続するためにはスポンサーの支援が必要不可欠です。しかし、世界経済はかなり悲観的な状況。スポンサー企業としても、『1年延期したからもう1年支援します』と簡単に言える経営状況でないことは間違いありません」(マスコミ関係者)

 2日にNHK総合で放送された「クローズアップ現代+」では、五輪延期による日本ボクシング連盟の強化費不足の深刻さを取り上げていた。本番までに海外遠征を増やす必要が出てきたことで、数千万円の不足が予想され、選手に負担を強いる可能性もあるという。

 関大名誉教授の宮本勝浩氏(経済学)は、東京五輪が1年延期されることで、日本全体の経済的損失が約6408億円に上ると試算している。その内訳は、大会延期にかかる諸費用が約4225億円、1年間の大会延期によって失われる経済効果が約2183億円だ。

 ただでさえ延期によるマイナスが大きい上に、日本経済は新型コロナウイルスの感染拡大による「コロナショック」にも苛まれている。

 東京商工リサーチが発表した〈上場企業「新型コロナウイルス影響」調査〉によると、全上場企業の約2割にあたる765社が、3月27日の正午までにコロナに関する情報を開示した結果、135社が業績を下方修正。売り上げ、純利益がそれぞれ1兆円以上減るという。

 日経平均株価は年初来高値(1月20日)の2万4083円から、1万7820円(3日終値)に急落した。「2008年のリーマン・ショック以上の経済危機が訪れる」と分析する専門家も少なくない。

■競技団代を直撃すると…

 そこで、本紙(日刊ゲンダイ)はいくつかの競技団体に、東京五輪の1年延期に伴うスポンサー契約の状況を聞いてみた。

●日本陸上競技連盟(スポンサー10社、サポート企業7社)

 現段階において、打ち切り、見直し等について、スポンサー側からの依頼・要望はございません。

●日本馬術連盟(スポンサー7社)

 現段階では話すことはありません。

●全日本テコンドー協会(同4社)

 現状としてスポンサー契約打ち切りの話はありません。推測では話せませんので。

●日本カヌー連盟(同10社)

 我々の連盟は協賛企業がもともと少なく厳しい状況で減ってしまうことは死活問題です。そのため去年の夏ごろから「五輪が終わった後はスポンサーが離れてしまうのではないか」という懸念があり積極的に企業さまと交渉を重ねてきました。それが実り五輪延長が決定する前の段階で次の契約を結ぶことができ、さらに協賛金も上げていただきました。2020年度はひとまず安心です。

●日本山岳・スポーツクライミング協会(同12社)

 まだ五輪の延期が決まったばかりなので、スポンサー契約についての話は出ていません。今は主催しているイベントが次々と延期になっているため、そちらのことを考えています。

●日本ホッケー協会(同14社)

 今のところはスポンサー打ち切りの話は特に聞いていません。3月25日に会長の中曽根(弘文)が出した五輪延期に伴うプレスリリースにある、「改めて、万全の準備を進め、一層の強化を行い、この1年間を有意義なものにしたい」という我々の気持ちを企業さまに伝え、これに支持をいただくことができました。それなので不安はありません。

■「約束」方針転換も

 各競技団体は総じて、現段階では延期に伴うマイナスはないというのだが、ビジネス評論家の菅野宏三氏はこう言う。

「旅行大手のHISのグループ企業でテーマパークのハウステンボス(長崎県佐世保市)は20人以上の派遣契約を解除した。入社式直前に内定を取り消された学生もいる。新型コロナウイルスの感染拡大に収束のメドが立たず倒産も相次いでいる。大手企業は倒産はしなくても、東京オリンピック・パラリンピックのワールドワイドパートナーになっているトヨタ自動車でさえ1兆円の融資枠を銀行に要請したと報じられ話題になった。オリンピックに関する投資は、いわばイメージ広告費です。自社がコロナ禍で大きな打撃を受ければ、一番に削減対象になる。選手や競技団体とのスポンサー契約を継続していれば『こんな時に五輪のためにカネを使うのか』と株主からも批判されるケースも出てくるでしょう。そもそも1年延期されたといっても、コロナの感染状況次第では来年に開催できるかもわからない。契約更新や継続を約束してくれている企業の方針が変わる可能性は十分にある」

 米国ラグビー協会は先月30日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で財政難に陥り、日本でいう民事再生法の適用を申請すると発表。スポンサー料が減ったことも原因だ。対岸の火事ではない。

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