元関脇・琴富士さん 偽装結婚で逮捕…今は行動で反省を示す
琴富士さん(56歳/大相撲・元関脇)
大栄翔の優勝で幕を閉じた大相撲初場所。平幕での栄誉は32人目(33度目)になるが、ちょうど30年前の7月場所で平幕優勝を果たしたのが、琴富士さん(佐渡ケ嶽部屋)だ。しかし、琴富士さんは引退後に偽装結婚容疑で逮捕され、表舞台から姿を消した。さて、今、どうしているのか?
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「昨年11月、僕が監修したちゃんこ鍋セット『待ったなし 琴富士ちゃんこ』を発売しましてね。今はこれの販促活動や百貨店での店頭販売をしてるんですよ」
琴富士さんと会ったのは神戸市兵庫区のリラクセーションサロン「もみ相撲 琴富士」。
「新型コロナウイルスの影響で、サロンは去年の3月からほぼ開店休業。そんな折、佐渡ケ嶽部屋の後輩力士で姫路市でスイーツの製造・販売を手掛けている姫路ミルキーウェイの大塚社長に声をかけてもらい、ちゃんこ販売に乗り出したってわけです」
鍋セットは国産鶏肉300グラムに特製スープ、カレーボール、調味料、そして締めのラーメン2人前で2300円(税別=以下同)。同社のHPから通信販売で購入できる。
「スープは、味噌でもなく塩でもないオリジナルで、たっぷりの野菜と煮込むとおいしさが倍増します。僕が千葉県出身なので、千葉特産の落花生の粉末と銚子名物のカレーボールを加えて“味変”を楽しめるのが特徴ですね」
2月10日までの期間限定なのが、兵庫県屈指と評判の瀬戸内・室津産の牡蠣1キロをセットにした新商品。3人前以上のボリュームで5000円だ。
■発達障害児の療育支援にも精を出す
「ちゃんこのほか、相撲教室『琴富士 相撲道場神戸』、そして発達障害児を対象に相撲の基本動作を取り入れた療育支援活動を行っています。こっちは足掛け3年ほどになりまして、神戸市内の放課後等デイサービス・児童発達支援施設3カ所と私立保育園1カ所へ定期的にお邪魔しています」
それにしてもどうして神戸へ?
「現役時代から付き合いのあった力ちゃん(元関脇の貴闘力さん)に、『三宮でちゃんこ屋をやるから』と誘われて都内から引っ越したのがきっかけです。それが2016年4月。でも人間関係の問題で17年1月にスッパリ退職しちゃった。貯金もないのに。アハハハ」
すぐに仕事は見つからず生活はドン底。食事は即席ラーメン、冷蔵庫もない生活だった。
そんな時、中学時代の同級生で、市内で療育セラピストをしている女性と会った。
「僕のいい時も悪い時も、全部知ってるわけです。で、ブッちゃけた話をしたら、『療育を手伝って欲しい』と言われてね。僕は相撲指導員資格を持ってるし、経験を生かせるかな、と」
子供たちがケガなく取り組める四股や伸脚、仕切りなどで体幹を鍛え、団体行動ができるように楽しく体を動かす。
「純粋無垢な子供たちと一緒だと、心が洗われスッキリした気持ちになれるんです。支援活動は正直、お金にはなりません。でもこれからも続けていきたいですね」
憂さ晴らしで競馬を始めて…
過去を遡ると、まさに波瀾万丈だ。中学卒業後、佐渡ケ嶽部屋に入門。1980年3月場所で初土俵を踏み、約10年で関脇まで駆け上がったものの前頭13枚目まで転落。だが、そこから地力を発揮して91年7月場所で平幕優勝。ところが、翌場所は体調不良の揚げ句、14日目に足首をけがしてしまい休場……。
「結局、思うように相撲が取れなくなり、その憂さ晴らしで始めたのが競馬だった」
95年に引退。年寄・粂川を襲名して佐渡ケ嶽部屋の部屋付き親方として指導に当たった。だが、年寄株は借り株だったため99年に返上し、相撲協会を退職した。
「あの頃が年寄株の値段のピーク。詳細は話せないけど、2億円だったらキャッシュで買えたんだよね」
その後は芸能活動をしたり、貴闘力さんが経営する飲食店で働いていたが、競馬に夢中になって家庭崩壊。さらに14年2月、偽装結婚容疑で逮捕され、同年5月、懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けた。
「いくら悔やんでも、やったことは事実。今は行動で反省を示すしかない。競馬? ほかのギャンブルを含めて、もう4年くらいやってないよ」
18年9月からユーチューブで「琴富士チャンネル」を配信開始。本場所中の取組解説、視聴者と生でやりとりするライブ中継が好評だ。
(取材・文=高鍬真之)