広沢とユマに着くと午前中2時間の地獄のアップにビックリ
「大学の卒業式に出てから来ればいいから」
土橋正幸監督率いるヤクルトにドラフト1位で指名された明大の広沢克己(現・克実)と同2位の法大の私は、1月24日から始まっている春季キャンプに合流するため、10日ほど遅れて米アリゾナ州ユマへ向かった。
東京からロサンゼルスまでは初めてのビジネスクラス。食事は豪華だし、シートは広い。映画も見放題で、プロに入ったと実感したものだ。
が、国内線に乗り継いで驚いた。12人ほどしか乗れない小型のプロペラ機というか、少し大きなヘリコプターといった感じ。スチュワーデスはいないし、低空飛行で揺れるから怖かったが、隣の広沢は「この飛行機、小っちゃいな。ロサンゼルスまでは良かったのになあ……。せっかくプロに入ったのに、本当に大丈夫かよ~」と体が大きい割に泣き言が止まらない。1985年の2月になって、すぐのことである。
まずはキャンプ地の設備の広さに仰天した。メイン球場を中心にして両翼100メートルのA、B、Cの3つのサブグラウンドが取り囲む形となっている。広大な施設に守備、バッティング、ランニングゾーンが造られ、4つの球場の中央にロッカールーム、シャワールーム、トレーニングルームが完備されていた。