菅野の故障で巨人が“腕まくり”引き留めに破格の40億円用意

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 8日に今季2度目の登録抹消となった菅野智之投手(31)を巡り、巨人が腕まくりをしているという。

 先発した7日のヤクルト戦で右肘の違和感を訴え、四回で緊急降板。原監督は「少し時間を空けようと。1回飛ばしぐらいになると思う」と説明し、菅野が登板するはずだった14日の先発マウンドには畠が上がった。そんな“緊急事態宣言”下にもかかわらず、巨人が勢いづいているというのはなぜか――。

■無意識に腕の振りが弱くなる

 今季は3月26日のDeNA戦で開幕投手を務め、6回3失点。その4日後の同30日に「足の違和感」で登録を抹消されていた。4月9日の広島戦で一軍復帰を果たし、7回2失点で敗戦投手となったが、同16日のDeNA戦は完封で今季初勝利。同23日の広島戦も1失点完投勝利を挙げた。ここまで6試合に先発して2勝2敗、防御率は1.93だった。

 昨オフにポスティングシステムを申請し、メジャー移籍を目指した。複数球団と交渉し、期限直前まで熟考を重ねたが、巨人残留を決断。今季は東京五輪での金メダル、巨人ではリーグ3連覇と初の日本一を目標に掲げた。

 しかし、早くも2度目の登録抹消。菅野は今季中に取得見込みの海外FA権を行使し、今オフのメジャー再挑戦を示唆していたが、その青写真にも影響が出るのではないか。

 投手にとって生命線ともいえる肘の故障に関し、巨人OBで元投手コーチの高橋善正氏がこう指摘する。

「一般的には肩よりは肘の故障の方がマシといわれます。肩を痛めると長引くことが多いからです。ただ、投手が肘を痛めると、復帰した後も投球時に怖さが出る。リリースのところで、無意識に腕の振りが弱くなってしまう。菅野の場合、最後のところで球を指で強く切っていて、これがキレにつながっていますが、肘に怖さがあると、これが弱くなってしまう恐れがあります。当然、球にスピンがかからず、菅野らしさは半減してしまうことになりかねません」

今回の故障で評価20~25%下落も

 こちらも巨人OBで元投手コーチの中村稔氏がこう言った。

「2年前には腰痛を発症して離脱と復帰を繰り返したシーズンがありました。今季もすでに足を痛めているし、はっきり言って満身創痍の状態。30歳を越えてケガが多くなった印象です。大リーグ挑戦はコンディションが万全であってこそ成功するもの。今回のケガによって本人の気持ちに変化がないとはいえないでしょう」

 前出の高橋氏が続ける。

「メジャー使用球は日本の公式球より大きくて滑りやすい。マウンドは硬く、登板間隔は日本の中6日より短い4日。日本人投手が大リーガーになって肘を痛めるケースが多いのはそのためです。来年33歳と若くはないし、挑戦する前年に痛めれば、慎重になるでしょう。巨人残留に気持ちが傾いても不思議ではありません」

 野球文化学会会長で、米球界に精通する名城大准教授・鈴村裕輔氏は、メジャー球団の菅野に対する評価はシビアになるとし、「昨オフなら年俸800万ドル(約8.7億円)~1000万ドル(約10.9億円)で4年契約もあったかもしれないが、今オフの挑戦なら長くて3年。1年600万ドル(約6.5億円)~800万ドルになるでしょう。今回の故障で評価は20~25%下落することが考えられます」と指摘している。

 ただ、これは巨人にとっては好都合だろう。今季は年俸8億円の単年契約を結んでいるが、エースを引き留めるため、破格の条件を用意しているともっぱらなのだ。さる球界関係者がこう言った。

「契約年数は来年から最低でも4年間で、33歳から36歳になる年まで。メジャー球団より長い長期契約を保証するつもりです。もしメジャー挑戦を断念して『生涯巨人』を誓うなら、年俸は今季の8億円から9億~10億円ベースまで引き上げて、総額40億円規模の用意があるそうです」

好条件オファーは昨季同様の活躍あってこそ

 年数だけでなく、金銭面でも巨人の方がメジャー球団より好条件ということになる。

 代理人を務めたジョエル・ウルフ氏は、菅野が挑戦を断念した1月、「懸念はない。もし素晴らしい活躍をしてMVPを取った20年のような活躍を今年もすれば、彼のような投手のためのマーケットは常に存在する」と自信を見せていた。

 昨季は史上初の開幕投手から13連勝を達成するなど、14勝2敗、防御率1.97。最多勝、自身初の最高勝率のタイトルを獲得し、セ・リーグMVPに輝くなど、キャリアハイの活躍を見せた。同氏は「スガノは簡単に手に入る選手ではない。自己管理もしっかりしているし、腕のケガを全くしていない。そんな選手を見つけるのは難しいこと」とし、昨季同様の活躍ができれば、好条件のオファーが引き出せるとしていたが、肘を痛めてしまった。

 巨人残留へ条件は揃いつつある。

■メジャー大物投手のFA事情

 メジャーリーグの2021年オフのFA市場は、大物投手がこぞって移籍するかもしれない。

 バーランダー(38=アストロズ)、グリンキー(37=同)、シャーザー(36=ナショナルズ)、クエト(35=ジャイアンツ)、カーショー(33=ドジャース)らに可能性があり、市場は活性化しそうだ。

 菅野の場合、譲渡金が発生するポスティングではなく、FAでの再挑戦となるのはプラス材料だ。

 一方で各球団のオーナーと選手会の間で行われる新労使協定の交渉が焦点。コロナ禍の影響で緊縮財政を強いられるオーナー側と条件闘争で譲歩しないことが見込まれる選手会の話し合いは紛糾することが必至。移籍市場への動きに影響を及ぼす危険性が指摘されている。

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