センバツが抱える矛盾と限界…聖隷クリストファー落選の不可解選考に名将も「NO!」

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「ちょっとこれは……かわいそうで言葉が出ませんね」

 こう話すのは智弁和歌山の高嶋仁名誉監督だ。

 1月28日に発表された今春のセンバツ出場校。昨秋の東海大会準Vの聖隷クリストファー(静岡)が落選したことについて、高野連の選考に批判が集中している。

 聖隷クリストファーが所属する東海地区の選考枠は「2」。東海大会を制した日大三島(静岡)は当然選ばれたものの、2校目は準Vチームではなく、なぜかベスト4の大垣日大(岐阜)だった。

■ダルや上原浩治もツイッターで批判

 高野連の選考委員はその理由に関して、聖隷クリストファーを「粘り強いチーム」と称賛しながら、大垣日大について「個人の力量で勝る。甲子園で勝つ可能性を公平かつ客観的に議論した」と説明。しかし、これには球界でもダルビッシュ有(現パドレス)が自身のツイッターで「聖隷クリストファー高を選考した上で特別枠で大垣日大高を選考するべきではないんですかね?」と疑問視。元巨人の上原浩治氏も同じく自身のツイッターで「『個人の力量』っていうのは違うよね 野球は団体競技」と批判している。

 冒頭の高嶋氏は、「『個々の力量』と説明がありましたが、聖隷クリストファーは秋季大会でエースと正捕手をケガで欠きながら準優勝。選手が戻ってくれば、もう一つ上の野球ができるはず。力量うんぬんはどうにも後付けのように思えてしまう」と、こう続ける。

“疑惑の選考”にはさまざまなウワサが

「2011年の九州大会で創成館(長崎)がベスト4に入りながら、準決勝でコールド負け。創成館は選ばれず、ベスト8の宮崎西(宮崎)がセンバツ出場というケースはありました。でも、準優勝で落選とは……。センバツの選考基準は非常に曖昧。私が指揮を執っていた当時の智弁和歌山は2000年にセンバツに出場したが、前年秋の近畿大会は1回戦負け。学校に『なんで1回戦負けのチームが選ばれるんだ』という内容の投書が来たこともあった。落選した聖隷クリストファーの子たちもそうですが、大垣日大の部員もいろいろ言われないかと心配です」

 すでに“疑惑の選考”にはさまざまなウワサが飛び交っている。「静岡2校を避けたかったからでは」というものに始まり、「コロナの問題もあって、静岡より岐阜の方が甲子園への移動距離が短いからだ」とか「大垣日大は阪口監督と孫の1年生の“祖父孫鷹”が話題になるからだ」など。それもこれも、高野連の説明では誰も納得していないからだ。

 そもそも東海地区の高野連加盟校は429校。中国・四国地区の428校とほぼ同数だが、選考枠は東海の「2」に対し、中国・四国は「5」と大きな開きがある。せめて東海の枠が「3」なら、今回の騒動はなかったかもしれない。

 センバツは予選形式の夏と区別化を図るために推薦形式にしたが、それも限界。センバツ選考の透明性のなさや不可解さは今に始まったことではない。「21世紀枠」の存在はさておき、高野連は選考基準について、「勝敗のみにこだわらない」とか「秋の地区大会は一つの参考資料」と定義しながら、「個人の力量」や「甲子園で勝てそうなチーム」という選考理由は明らかに矛盾する。それこそ高野連が忌み嫌う「勝利至上主義」そのものではないか。

■「秋季大会から選考すべき」

 スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は「選考委員は『客観性』という言葉を使っていましたが……」とこう続ける。

「その客観性の担保がまったく取れていません。センバツの選出基準はあってないようなもの。だからこそ大会を開催する前提として、主催者は『なぜこのチームを選んだのか』について、誰もが納得できる説明を果たす責任がある。客観性と言うならば、秋季大会の成績以上のものはない。その結果をもって、出場校を決定すべきです。『個人の力量』というのは、その成績を無視してもいいほどのものなのか。聖隷クリストファーにすれば、『準優勝したけど、それがあなたたちの限界ですよ』と言われたようなもの。高校野球が『教育の一環』というのはそもそも建前でしかないが、それを言うことすら恥ずかしい」

 今年で94回目を迎えるセンバツは戦後、GHQによってその存在が疑問視されたこともあった。「全国大会は年に2つも必要なのか?」という理由だ。当時の高校野球関係者や主催の毎日新聞はそれに対し、「センバツは招待試合」などと必死にアピール。今に至るまでセンバツ開催の「錦の御旗」になっている。

「いつまで経っても選考方法などの改善の努力すら見えない。こうなると『センバツは本当に必要か?』という根本に立ち返るべきです」と、前出の谷口氏が言うのはもっともだが、どういう経緯があるにせよ、透明性が重視される今の時代にそぐわない選考はやめて、夏と同様に結果を重視、「春の甲子園」として出直した方がいい。

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