著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

「大谷ルール」への支持はMLB労使紛争での“分かりやすい構図”がもたらした

公開日: 更新日:

 遠くの出来事は、より明確で分かりやすく、直観的な情報によって判断が左右されるという点は、今回のウクライナ紛争に限らない。人々の日常生活の中にも見いだされるし、スポーツも例外ではない。

■労使交渉のマイナスを危惧

 大リーグ機構と選手会が合意した、投手を指名打者(DH)として起用した場合に限り、降板後も打者として継続して出場できるという新しい規則は、その典型だ。

 現時点で年間を通して投手とDHを兼ねる可能性のある選手がエンゼルスの大谷翔平だけであることから「大谷ルール」とも呼ばれる新規則は、今回の労使紛争で印象の悪化と観客数の低迷を危惧する機構が、話題づくりのために導入したともいわれる。

 確かに、コミッショナーのロブ・マンフレッドは2017年ごろから大谷の動静に言及することがあった。そのため、人気回復の一環として大谷の存在を積極的に活用しようと考えても不思議ではない。

 しかし、どれほど機構が力を入れても、観客の支持を得られなければ新規則が期待通りの効果を発揮することはない。むしろ「規則を変えれば大谷の活躍できる機会が増える」という構図の分かりやすさが、一部の専門家や記者たちの批判に対し、大多数の人の支持という結果につながっているのである。実際の成果は今季の終了を待たねばならない。それでも、少なくとも「大谷ルール」によって球界が開幕前に人々の注目を集めたことだけは間違いない。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    芸能界を去った中居正広氏と同じく白髪姿の小沢一敬…女性タレントが明かした近況

  4. 4

    中居正広氏、石橋貴明に続く“セクハラ常習者”は戦々恐々 フジテレビ問題が日本版#MeToo運動へ

  5. 5

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  1. 6

    広末涼子が逮捕以前に映画主演オファーを断っていたワケ

  2. 7

    大阪万博メディアデー参加で分かった…目立つ未完成パビリオン、職人は「えらいこっちゃ」と大慌て

  3. 8

    容姿優先、女子アナ上納、セクハラ蔓延…フジテレビはメディアではなく、まるでキャバクラ状態だった

  4. 9

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

  5. 10

    エンゼルス菊池雄星を悩ませる「大谷の呪い」…地元も母校も同じで現地ファンの期待のしかかる