鈴木誠也の選球眼・長打力をカブス監督もベタ褒め! 開眼は広島レギュラー定着前にあった
カブス・鈴木誠也(27)が存在感を増している。
日本時間22日のパイレーツ戦は「2番・DH」で出場。初めて指名打者で起用され、第1打席は相手の先発右腕ウィルソンに対し、カウント1-2から高めの変化球に手が出ず見逃し三振。二回の第2打席は1死一、三塁の好機で三塁ゴロの間に三塁走者を迎え入れた。五回1死の第3打席は空振り三振、七回2死三塁の第4打席は空振り三振。ブリュワーズとの今季開幕戦から続いていた連続試合出塁は、07年のレイズ・岩村明憲と並ぶ日本人最長タイの「12」で止まったものの、移籍1年目ながら18日に発表された週間MVP(11~17日)に選出されている。
22日終了時点で出塁率.520はメジャー全体のトップ。強打者の指標となるOPS(出塁率+長打率)は1.263となり、こちらも3位に浮上した。打率.343はナ・リーグの堂々2位だが、20日のレイズ戦では3四球を選ぶなど、打たずして相手にダメージを与えることもできる。これこそが鈴木の「すごみ」でもある。
7年前の話になる。まだ広島のレギュラーに定着する前の15年の開幕前、鈴木は日刊ゲンダイの取材にこう言っていた。
「(高卒2年目の)去年、ある程度結果が出たのは、フルスイングができたから。でも、やられる時は内(インコース)でカウントを稼がれて低めのボール球の変化球を振らされる。凡打の時はこればっかりでした。ボール球をいくら振ってもヒットにはならない。課題は選球眼。いかにストライクだけをフルスイングできるか。このオフはそれだけに集中しました」
■「最初は出塁率という数字の良さが分からなかった」
そこで師匠に選んだのが、当時広島の中軸を張っていた丸(現巨人)だった。
「丸さんは3割(14年.310)を打ったのに、やたらと四球が多かった(同年100でリーグトップ)。絶対にボール球を振らないし、低めの変化球にバットが止まる。すげーな、あれは投手は嫌だろうなと思って見ていたんです。だから、オフに弟子入りさせてもらえるように頼みました。もともと出塁率という数字の良さが分からなかったけど、丸さんが出塁しまくっているので、そういう打者がいい打者なのかと出塁率にもこだわるようになったんです」
丸に合同自主トレを志願し、ポイントを打者寄りにして逆方向を意識することなど「匠の技」を伝授された、と目を輝かせていた。
以降、「ボール球を見極める」という新たな武器を得た鈴木は“神ってる”活躍でレギュラーに定着。
19年には103四球を選び、.453で最高出塁率、打率.335で初の首位打者のタイトルを獲得した。同.317で2度目の首位打者となった昨季、リーグ3位の38本塁打を放っても、87四球を選び、.433で2度目の最高出塁率のタイトルも取っていた。
どうバットを入れれば30度になるか
カブスのロス監督も「彼の選球眼が非常に良くて、振るべき球をよく理解しているということだと思う。彼ほどの選球眼があり、また球界の傾向として制球よりも球質(速さや変化量)を優先する傾向があるから、いい形になっているのだろう」と目を細める。
昨21日のレイズ戦で三回に喫した三振も、自信を持って見逃したカットボールをストライクと判定されたもの。現在メジャーリーグのストライクゾーンを測っている段階で、これがインプットされれば、今後はさらにすごみを増していくだろう。
もちろん「見る」だけではない。これまで打率.343、12打点、4本塁打。侍ジャパンの4番となった今でも「ボクは中距離打者」と自己評価する。一方で広島時代から「打球の角度は25度か30度か。そのためにはバットを40度か45度で入れればいいのか──。どうスピンをかければ飛距離が出るのか」とバットを入れる角度と打球の角度の因果関係を研究していた。古巣・広島の球団関係者がこう言った。
「今でこそラプソード(弾道計測機器)が導入され、バレルゾーンという打球角度を意識することが普通になったけど、誠也はずっと前から自主トレで弟子入りした内川(ヤクルト)や侍ジャパンで意気投合した坂本(巨人)、時には同い年の大谷(エンゼルス)、あるいは助っ人選手などに、どう打ったら遠くへ飛ばせるかを聞いて回っていて、シーズン中も試しながら戦っていた。表向きは『本塁打のこだわりはない』と繰り返していたが、メジャーリーガーになったら、外野手は本塁打を打たないと評価されないことを知っていた。これまでの研究は今、この時のためだったんです」
鈴木は「英語は小学生レベル」と頭をかくが、広島時代から「野球脳は高い」といわれていた。MLBのロックアウトが3月半ばまで長引いたことで、初めてのキャンプも満足に送れず、準備期間が短かったことで、苦労するだろうとみられていた。しかし、鈴木は周到な準備と選球眼という真骨頂を組み合わせることで、厳しいことで有名なシカゴのファンをうならせている。