全米女子アマV馬場咲希「驚異の心技体」 中1から指導した坂詰和久コーチが明かす
今年のアマチュア世界ナンバーワンを決める「全米女子アマチュア選手権」は、日本ウェルネス高校2年生の馬場咲希(17)が優勝した。36ホールのマッチプレーで行われた決勝戦は11&9。9ホールを残して11アップの勝利は大会史上3位タイ記録だった。
馬場を中学1年生の時から指導するのが日刊ゲンダイの好評連載「ハイパフォーマンスゴルフのススメ」の坂詰和久コーチ(52)だ。
愛弟子・馬場について話を聞いた。
◇ ◇ ◇
──馬場咲希さんの全米女子アマ優勝おめでとうございます。この結果は予想していましたか。
「大会前には『勝ったらペブルビーチ(来年の全米女子オープン会場)に出られる』と話はしていましたが正直、勝てるとは思ってもいませんでした。咲希のプレースタイルはセーフティーな守りのゴルフではなく、ピンとカップしか見ていない。そんな攻撃的な性格がマッチプレーに向いていたのかもしれません」
──勝因はパットが好調だったことです。
「はい。ですが上位64人のマッチプレー進出者を決めるストロークプレーの予選では『パットが入らない』と悩んでいたのです」
──それをどのように修正したのでしょう。
「試合中に急ごしらえで何かに取り組んでも、翌日にパットがガラリと変わり、入るわけではありません。グリップや姿勢を変えて“迷子”になったりしないことが大事です。なので耐えて自分のゴルフをするように、とアドバイスしました」
■ボールの「打ち方」は一切教えていない
──馬場選手をいつから指導していますか。
「中学1年生からです。初めて私の所に来たのは小学4年生でしたが、その時はまだ早いと思い、“門前払い”したんです」
──なぜですか。
「小学生のうちから型にはめたくなかったんです。それよりも他にいろいろな遊びやスポーツをして体を動かしてほしかったのです」
──中学生になって本格的な指導を始めたのですか。
「レッスンは月に1、2回。最初はプロを目指すというよりも、お父さんが一緒にゴルフをやりたいということで始まりました。最初は習い事の延長、という感じです」
──指導で大事にしていることは?
「これまでボールの『打ち方』は一度も教えたことがありません。教えたのは『体の使い方』です。TPI(タイトリスト・パフォーマンス・インスティテュート。世界のトップ選手の指導者のほとんどが持つ資格)の基本である、体で生み出したパワーをいかに効率的にボールに伝えるか、を重要視しました。身長が175センチまで伸び、体の使い方を覚えてからボールが飛ぶようになりました。あと、“褒める”こともしません」
──スパルタ指導ですか。
「怒ることもないし、指導方法が根性論でもないからスパルタではないですよ。ただ、褒めるとその時点での状態に満足してしまい、変化を嫌うようになる。今はあくまでジュニアゴルフの延長の中で指導していて、今後は目標設定も変わっていく中で進化や変化をしていく必要があります。現状に満足して進化が止まることのないように、というのが理由です」