東日本大震災の余震が続く中「我が子を守る」と決めた日
「師範代」の木札
涙を流す蒼国来に、私も「なんでこの子は遠い異国の地でつらい目に……」と思い、「こんなことになるなら、おまえを日本に連れてこなければよかったかもしれないなあ……」と、弱音を吐いてしまったこともあります。弁護士の先生方にも、「仮に裁判で解雇無効を勝ち取れても、土俵に戻れるかどうかは……」と言われるように先が見えなかったのも確かです。
ただ、それでも蒼国来の意志は固かった。彼の胸にあったのは、「再び土俵に戻りたい」というただ一心。
相撲部屋には番付と力士の名前を書いた木札が壁に掛かっています。私はそれまで蒼国来の横にあった「幕内」の札を外し、代わりに新たに作った「師範代」の木札を掛けました。裁判を経て、必ず戻ってくる、戻ってきてほしい。私もその一心でした。(つづく)