風呂場をピカピカに磨いた19歳の蒼国来 苦しい中でも変わらぬ気遣い
現在の荒汐親方、蒼国来が裁判中に何を思い、苦悩していたのかは、私には想像するしかありません。優しいけど芯に強さを秘めているので、弱音もめったに吐かない子なんです。ただ、そんな中でも人を気遣える気持ちには何の変わりもありませんでした。
相撲協会から解雇処分を下され、裁判に臨んだ当初も、蒼国来はそれまで通り、荒汐部屋で寝起きしていました。私が彼を応援しているといっても、事情が事情です。「協会との裁判を起こしている力士を住まわせるのはおかしくないか?」と思った人もいたでしょう。
私は特に気にしていませんでしたが、そうした空気を蒼国来は感じ取ったのでしょうね。「私がここにいたら、迷惑になりますから」と言い、自分から部屋を出ていくことになりました。
■来日、翌日に名古屋の強行軍
思い返せば、蒼国来が初めて来日した当日。2003年の夏のことです。私は当初、この年の名古屋場所で彼をデビューさせたかったのですが、来日の日程上、かなわず。それでも本場所の雰囲気を体験させたく、名古屋に連れていくことにしました。来日して荒汐部屋に1泊し、翌日名古屋に……という超ハードスケジュール。部屋に泊まったその日の出来事です。