遠藤航は第2次森保Jでも大黒柱に 崖っぷちを経験した30歳の主将が目指す新たな領域
遠藤航(シュツットガルト・MF/30歳)=前編
「クロアチアがモドリッチ(レアル・マドリード)とコバチッチ(チェルシー)を(延長前半途中に)下げたのを見て、それだけの選手がいるんだと改めて感じた。日本もこれだけ海外でやってる選手が多い代表は初めてだったけど、もっと個人のベースを上げていかなきゃいけない」。カタールW杯決勝T1回戦でクロアチアに敗れ、4度目の8強挑戦に敗れた後、こう語った遠藤は、個のレベルアップを常に意識しながら今季ブンデスリーガ1部後半戦を戦っている。2月に30歳となったが「体が衰えるどころか、むしろコンディションがよくなっている」。第2次森保日本でも大黒柱に君臨するはずだ。
◇ ◇ ◇
1月のフットボールカンファレンスで、ドイツ代表SDのシャツィオレックス氏らから「素晴らしい選手」と絶賛された。
日本サッカー協会(JFA)の反町康治技術委員長も「アルゼンチンにはデパウル(アトレチコ・マドリード)やエンソ(マンチェスター・シティ)のようにボールを刈り取れる選手が5~6人いるが、日本は航1人」と世界レベルの守備能力を高く評価していた。
「そうやって褒めてもらえるのは嬉しいですよね。(W杯で対戦した)ドイツ代表のフリック監督も前向きにコメントしてくれたみたいで、ドイツ内での評価が高まっているのかな、と。自分はドイツがw杯で優勝しているのを見て育っているので今、その国でプレーできていること自体、有難いことです」と2月に現地取材に赴いた際、そう言いながら笑顔を見せた。
その反面で「僕のフィジカルベースは世界的に見たら普通。同等かもっと上の選手が沢山いるのがW杯だった」とも冷静に分析していた。
「アルゼンチンやモロッコはそういう選手が集まっていた。そう考えると日本は物足りない。フィジカルベースを引き上げていかないといけないですね。それにプラスして、アルゼンチンは個人技術や繋ぎの質が高かった。自分のやってきたことは世界基準に近づきつつあるとは思うけど、積み上げていくべきところはまだまだ沢山あります」
目指す領域は果てしなく高いのである。
17歳だった2010年に湘南でJリーグでデビューし、2016年リオデジャネイロ五輪、2018年ロシアW杯、2022年カタールW杯出場と着実に階段を上ってきた。
■2月で30歳に
そんな彼も30歳を迎えた。2月9日の誕生日は妻と4人の子供のみならず、チームメートの原口元気、伊藤洋輝の家族、さらに(シュツットガルトⅡに所属する)チェイス・アンリらとともに食事会を開催。新たな活力を得たようだ。
「まあまあ歳を取ったかなと思います」と本人は苦笑したが、今の時代はアスリートの選手寿命も伸び、30代になってから伸びる選手も少なくない。同じドイツには39歳で欧州CL参戦中の長谷部誠(フランクフルト)がいるし、カタールW杯でキャプテンマークを巻いた34歳の吉田麻也(シャルケ)もいる。先輩の姿は大きな刺激になるはずだ。
「年齢を重ねることで経験も増えていますし、理想とする自分のプレー増に近づきつつあるのかなとは思います」と好感触を持ちながら、3年後の2026年北中米W杯を目指していく構えだ。
「これだけの選手になれば、もう少し格上のクラブでプレーできるのではないか」という見方も出てきて当然だ。
同じ1993年生まれの伊東純也(スタッド・ランス)も昨夏に欧州5大リーグにようやくステップアップ。今季の目覚ましい活躍によって、マルセイユなど強豪クラブから熱視線を送られるようになっている。