「トワイライト・シャッフル」乙川優三郎著

公開日: 更新日:

 時代小説の分野で、時代小説大賞、山本周五郎賞、直木賞を総なめにし、昨年初めて挑んだ現代小説「脊梁山脈」で大佛次郎賞を受賞した著者による現代小説第2弾。美しい海と砂浜のある房総半島の町を舞台に、思い通りにならない人生を生きる人々を丁寧に描く。

 収録されているのは、元海女の切ない友情をつづった「イン・ザ・ムーンライト」、房総の地に流れ着いた異国人の物語「サヤンテラス」、観光客のためにピアノを弾く孤独なピアニストのささやかな挑戦を描いた「オ・グランジ・アモール」、離婚後にがんを発症した女の再起の物語「ミラー」、一家の大黒柱として難病の弟を支えてきた姉がヌードモデルのアルバイトをする「ムーンライター」、年に一度だけの逢瀬を繰り返す不倫男女を描いた「サンダルズ・アンド・ビーズ」、交通遺児の境遇で朝から晩まで働き尽くした男が見つけた希望の物語「私のために生まれた町」など計13の短編。

 焦燥や失望、諦観や再起への望みなど、人生の苦味を知る年頃になった大人なら誰もが身に覚えのあるさまざまな感情が、それぞれの物語の中に静かに息づいている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  2. 2

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  3. 3

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  4. 4

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  5. 5

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  1. 6

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  2. 7

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  3. 8

    NHK新朝ドラ「あんぱん」第5回での“タイトル回収”に視聴者歓喜! 橋本環奈「おむすび」は何回目だった?

  4. 9

    歌い続けてくれた事実に感激して初めて泣いた

  5. 10

    フジ第三者委が踏み込んだ“日枝天皇”と安倍元首相の蜜月関係…国葬特番の現場からも「編成権侵害」の声が