「街場の戦争論」内田樹著

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「僕たちが今いるのは、二つの戦争つまり『負けた戦争』と『これから起こる次の戦争』にはさまれた戦争間期ではないか」

 そんな著者の皮膚感覚が、この本の土台にある。前の戦争で失ったものを問い直すことなく経済最優先で突っ走り、アメリカの従属国であることにあまりにも無自覚。改憲、特定秘密保護法、集団的自衛権と、国を危機に陥れる政策ばかり推し進める安倍政権を支持する多数の国民。かくして日本は「戦争のできる国」になろうとしている。
 この国はなぜこんなふうになってしまったのか。独自の視座から今を読み解き、知的想像力を働かせて近未来を予測する。

 前の戦争で、日本は自力では敗北の検証ができないほど、ひどい負け方をした。そして主権を失ったまま70年もの間、「主権国家のように振る舞ってきた」との指摘に目を開かされる。日本は主権国家ではないと考えれば、この国で起きているおかしなことの説明がつく。

 このままでは「たぶんろくでもないことが起こるだろう」という禍々しい予感が杞憂に終わることを、著者自身も念じている。思考停止状態から覚醒し、愚かな選択をしないために、全ての日本人が今読むべき価値ある一冊。

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