「山崎豊子先生の素顔」野上孝子著
秘書は常に創作の現場に立ち会い、作家の情熱と懊悩を見続けた。同志のごとき秘書は、老いた先生に一度だけ、面と向かってこう言う。
「先生は、日本一の作家です!」
先生は照れ笑いしながら、愛犬に向かって言った。
「お姉ちゃん(著者のこと)、今日はおかしいことを言うねぇ」
2013年に体調が悪化。海上自衛隊をテーマにした「約束の梅」執筆中に亡くなった。享年89。(文藝春秋 1500円+税)