著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

“作品に触れる”造本に驚嘆

公開日: 更新日:

 225×300ミリ。本文224ページ。コデックス装。「背」はかがってあるものの剥き出しで、特殊な糊で固めてある。この製本は開きが良く、机に置いたまま楽に開くことが出来る。さらに通常、ガーゼ状の布=「寒冷紗」で背を補強するが、本書では作家オリジナル「藍染めよろけ麻布」を使用。もったいなくも、表紙掲載作品の素材を断裁しそのまま使用。文字通り「作品に触れる」ことの出来る造本になっている。一方棚差しの場合、カバーがないため、この藍染めの麻布が鮮烈なアイキャッチとなる。本来あるべき背表紙のタイトル/著者名の代役を務める粋な計らいだ。

 さて、「藍」の染め付け部分よりも、広く染め残した「白い生成り」を際立たせようとする、逆説的コンセプトは示唆に富む。「間」を生かす作家ならではの「引き算」の美。それは、着物を解き平面に縫い合わせタピスリーとして再生する「古布」という作品群に最もよく体現されている。

 本書の記憶が消えぬ間に、実物の展示会場に行ってみたい。作品群が織りなすたおやかな空間で、しばし佇んでいたい。そんな気にさせる一冊だ。(赤々舎 8000円+税)

▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

【連載】見た目で買った面白読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末